NITTA COFFEE — Since 1940
新田珈琲の抽出メソッドは、JHDC(ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ)2023・2024連続優勝の新田和雄が、日々の抽出と競技経験をもとに体系化した考え方です。「抽出深度」という概念を軸に、湯温・粒度・時間・比率・攪拌の5つの変数で濃度勾配と拡散速度をコントロールし、コーヒーの味を意図的にデザインするという考え方をお伝えしています。
ドリップしたコーヒーの味は「抽出深度」で決まる――これが新田珈琲の一貫したテーマです。
それぞれのコーヒーが持つ味わいのバランスに合わせ、湯温、粒度、時間、比率、攪拌という5つの変数を制御することで、濃度勾配と拡散速度をコントロールし、酸味・甘み・質感・後味の抽出バランスを意図的にデザインします。
この考え方を、お店のスタッフ教育から商品開発まで、すべてに貫いています。
コーヒーの味わいに影響する要因は、大きく分けて7つあると考えています。コーヒー豆そのもの(産地・品種・精製方法・選別・焙煎度・焙煎方法など)、水(硬度・pH・アルカリ度)、そして湯温・粒度・時間・比率・攪拌です。このうち、同じコーヒー豆と同じ水を使うという前提に立つと、抽出の現場でコントロールできるのは以下の5つの変数になります。この5つの組み合わせで「抽出深度」を調整していくのが、新田珈琲の抽出の考え方です。
成分の溶出速度に最も大きな影響を与える変数だと感じています。温度が高いほど拡散速度が上がり、抽出効率が高まる傾向があります。
お湯とコーヒー粉の接触面積と、粉の中心から表面までの距離に関わる変数です。細かいほど表面積が増え、さらに中心から表面への距離が短くなるため、心地よい成分も、そうでない成分も含め、溶け出しやすくなる傾向があります。
お湯とコーヒー粉が接触している総時間。時間が長いほど抽出深度は深くなる傾向があります。
コーヒー粉の量と注ぐお湯の量の比率。濃度勾配の初期条件に大きく関わります。
注湯のスピード・軌道・回数によって生じる粉の撹拌。拡散速度に影響を与えると考えています。
濃度勾配(concentration gradient)とは、コーヒー粉の内部と周囲のお湯との間に生じる成分濃度の差のことです。この現象はフィックの拡散法則(Fick's law of diffusion)によって説明され、「拡散量は濃度勾配に比例する」という関係性を示します。つまり、新鮮なお湯を加えると濃度差が大きくなり、成分の溶出が促進されます。新田珈琲の抽出メソッドでは、注湯の量やタイミングによってこの濃度勾配を意図的にコントロールし、味わいをデザインしています。
コーヒーの成分が粉の内部からお湯に溶け出すスピードのことです。拡散速度は、濃度勾配と湯温によって変化すると考えられます。温度が高く、濃度勾配が大きいほど拡散速度は上がる傾向があります。新田珈琲の抽出メソッドでは、この拡散速度のコントロールを「味のデザイン」の核心と捉えています。
一般的な感じ方としては、コーヒーの成分は酸味→甘み→苦味→雑味の順で溶出していく印象があるかと思います。この溶出の順序性を理解することで、「どこまで抽出するか=抽出深度」を意図的にコントロールしやすくなるのではないでしょうか。
※ 抽出のレシピは、豆の状態や季節に応じて日々変わる可能性があります。ここでは基本的な考え方としてご紹介しています。
新田珈琲の抽出では、濃度勾配を意識するために注湯量を粉量基準で設計しています。各注湯の湯量を粉量の倍率で捉えることで、抽出深度の調整がより意識しやすくなります。
| 項目 | 推奨値 |
|---|---|
| コーヒー粉 | 16g(中粗挽き) |
| お湯 | 200g(85℃) |
| 蒸らし | 粉量の2倍 / 30秒 |
| 合計抽出時間 | 2分以内 |
| ドリッパー | 円錐形推奨 |
コーヒー粉16gを中粗挽きにセット。お湯を85℃に調整します。フィルターをリンスしてドリッパーを温めておきます。
粉量の2倍の湯量(ここでは32g)を注ぎ、30秒蒸らします。コーヒー粉内部にお湯が浸透し、焙煎時に生成された二酸化炭素が放出されます。この工程が、その後の均一な抽出につながると考えています。
中心から「の」の字を描くように注湯。序盤の注湯量を多くするのが、私たちの抽出の特徴のひとつです。濃度勾配が大きいこの段階で多く注ぐことで、酸味と甘味が感じられやすい液体に仕上がると感じています。
粉全体から成分を引き出せるよう、ペーパーに付いている粉の山(土手)を崩し、平らにしていくイメージです。
後半は少量の注湯で抽出深度を微調整していくイメージです。
合計200gになるまで注湯。抽出が終わったら、ドリッパーを引き上げて完成です。
基本レシピをベースに、焙煎度に応じて変数を調整することで、それぞれの豆の個性を引き出せます。
| 焙煎度 | 湯温 | 挽き目 | 抽出時間 | 味わいの傾向 |
|---|---|---|---|---|
| 浅煎り | 85〜90℃ | 中粗挽き | 1:30〜2:00 | 明るい酸味、フルーティ、華やか |
| 中煎り | 80〜90℃ | 中粗挽き | 1:30〜2:00 | 酸味と甘みのバランス、クリーン |
| 深煎り | 80〜85℃ | 中粗挽き | 1:30〜2:00 | ボディ、ビター |
何度がベストかは、お好みにより変わり、また器具などの環境によっても異なりますので、ご自身のお好みの味わいが再現できる温度が、ご本人にとってのベストと言えるかと思います。
参考ではありますが、新田珈琲では85℃を基本としています。湯温はコーヒーの成分の溶出速度に直結する、最も影響力の大きい変数だと感じています。高すぎると苦味や渋みが強く出やすく、低すぎると酸味が際立つ傾向があります。85℃は酸味・甘み・ボディのバランスが取りやすい温度帯ですが、豆の焙煎度によって調整します。浅煎りなら85〜90℃、深煎りなら80〜85℃を目安にお試しください。
抽出深度の進み具合が、早くなったり遅くなったりするとお考えいただくと分かりやすいかと思います。
蒸らしは、コーヒー粉の内部にお湯を浸透させ、焙煎時に生成された二酸化炭素を放出させるとともに、成分が溶け出すために十分な吸水を促すための工程です。新田珈琲では30秒の蒸らしを基本としています。蒸らしが不十分でガスが豊富に残った状態で注湯すると、炭酸ガスが吸水を妨げ、お湯と粉の接触が不均一になり、十分な抽出ができないまま工程が進んでしまいます。しっかり吸水させることで、その後の注湯で均一な抽出が実現できます。
新田珈琲の抽出理論では、粒度はお湯との接触面積と、粉の中心から表面までの距離に関わる変数として捉えています。粒が細かいほど表面積が増え、さらに中心から表面への距離が短くなるため、心地よい成分も、そうでない成分も含め、溶け出しやすくなる傾向があります。ただし、心地よい成分もそうでない成分も出やすくなる点は意識しておくといいかもしれません。参考に新田珈琲のハンドドリップの基本は中粗挽き(グラニュー糖とザラメの中間程度)が多いですが、お好みに合わせて調整してみてください。
「抽出深度」は、コーヒーからどの程度まで成分を引き出しているかを表す概念です。多くのコーヒー愛好家や専門家が日々の抽出の中で感覚的に捉えている概念かとは思いますが、新田珈琲ではあえて言葉を与えることで、より明確にイメージできるようにしました。一般的な感じ方としては、コーヒーの成分は酸味→甘み→苦味→雑味の順で溶出していく印象かと思いますが、抽出深度が浅いほど酸味が中心となり、深くなるにつれて甘味、苦味、最終的に雑味まで含まれやすくなります。理想的な抽出とは、この抽出深度を適切にコントロールし、「好ましい成分」は十分に、「好ましくない成分」はできるだけ抑えることです。
濃度勾配(concentration gradient)とは、コーヒー粉の内部と周囲のお湯との間に生じる成分濃度の差のことです。この現象はフィックの拡散法則(Fick's law of diffusion)によって説明され、「拡散量は濃度勾配に比例する」という関係性を示します。つまり、新鮮なお湯を加えると濃度差が大きくなり、成分の溶出が促進されます。新田珈琲の抽出メソッドでは、注湯の量やタイミングによってこの濃度勾配を意図的にコントロールし、味わいをデザインしています。