Extraction Method
コーヒーの抽出理論 ― 濃度勾配と拡散速度で味をデザインする
新田珈琲の標準レシピは、コーヒー粉16gに対し、85℃のお湯を合計200g、5回に分けて約2分で抽出する方法です。JHDC(ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ)2023・2024連続優勝の新田和雄が、濃度勾配と拡散速度の制御に基づいて、体系化しています。
Extraction Method
新田珈琲の標準レシピは、コーヒー粉16gに対し、85℃のお湯を合計200g、5回に分けて約2分で抽出する方法です。JHDC(ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ)2023・2024連続優勝の新田和雄が、濃度勾配と拡散速度の制御に基づいて、体系化しています。
新田珈琲のコーヒーの抽出理論は、JHDC(ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ)2023・2024連続優勝の新田和雄が、スペシャルティコーヒーの日々の抽出と競技経験をもとに体系化した考え方です。「抽出深度」という概念を軸に、湯温・粒度・時間・比率・攪拌の5つの変数で濃度勾配と拡散速度をコントロールし、コーヒーの味を意図的にデザインするという考え方をお伝えしています。
Standard Recipe
Philosophy
ドリップしたコーヒーの味は「抽出深度」で決まる――これが新田珈琲の一貫したテーマです。
それぞれのコーヒーが持つ味わいのバランスに合わせ、湯温、粒度、時間、比率、攪拌という5つの変数を制御することで、濃度勾配と拡散速度をコントロールし、酸味・甘み・質感・後味の抽出バランスを意図的にデザインします。
この考え方を、お店のスタッフ教育から商品開発まで、すべてに貫いています。
Five Variables
コーヒーの味わいに影響する要因は、大きく分けて7つあると考えています。コーヒー豆そのもの(産地・品種・精製方法・選別・焙煎度・焙煎方法など)、水(硬度・pH・アルカリ度)、そして湯温・粒度・時間・比率・攪拌です。このうち、同じコーヒー豆と同じ水を使うという前提に立つと、抽出の現場でコントロールできるのは以下の5つの変数になります。この5つの組み合わせで「抽出深度」を調整していくのが、新田珈琲の抽出の考え方です。
成分の溶出速度に最も大きな影響を与える変数だと感じています。温度が高いほど拡散速度が上がり、抽出効率が高まる傾向があります。
お湯とコーヒー粉の接触面積と、粉の中心から表面までの距離に関わる変数です。細かいほど表面積が増え、さらに中心から表面への距離が短くなるため、心地よい成分も、そうでない成分も含め、溶け出しやすくなる傾向があります。
お湯とコーヒー粉が接触している総時間。時間が長いほど抽出深度は深くなる傾向があります。
コーヒー粉の量と注ぐお湯の量の比率。濃度勾配の初期条件に大きく関わります。
注湯のスピード・軌道・回数によって生じる粉の撹拌。拡散速度に影響を与えると考えています。
Core Concepts
新田珈琲のコーヒーの抽出理論における「濃度勾配」とは、各注湯段階でのお湯と粉の比率のことです。全体のレシオ(粉16g:湯200g=1:12.5)とは別に、各注湯の瞬間ごとにお湯と粉の比率は異なります。たとえば、1投目は32gのお湯に対して16gの粉(1:2)、2投目で累計128gに達すると(1:8)になります。この「瞬間的な比率」の違いが拡散速度を直接左右します。
序盤はお湯の量が少なく、粉に対する比率が小さいため、成分が高い濃度で溶け出します。このときに酸味や甘味の成分が効率よく抽出されます。後半に向かうにつれてお湯の比率が上がり、溶出の勢いは緩やかになります。この変化を注湯の量とタイミングで意図的に設計するのが、新田珈琲のコーヒーの抽出理論の核心です。
コーヒーの成分が粉の内部からお湯に溶け出すスピードのことです。拡散速度は、濃度勾配と湯温によって変化すると考えられます。温度が高く、濃度勾配が大きいほど拡散速度は上がる傾向があります。新田珈琲のコーヒーの抽出理論では、この拡散速度のコントロールを「味のデザイン」の核心と捉えています。
一般的な感じ方としては、コーヒーの成分は酸味→甘み→苦味→雑味の順で溶出していく印象があるかと思います。この溶出の順序性を理解することで、「どこまで抽出するか=抽出深度」を意図的にコントロールしやすくなるのではないでしょうか。
Step by Step
※ 抽出のレシピは、豆の状態や季節に応じて日々変わる可能性があります。ここでは基本的な考え方としてご紹介しています。
新田珈琲の抽出では、濃度勾配を意識するために注湯量を粉量基準で設計しています。各注湯の湯量を粉量の倍率で捉えることで、抽出深度の調整がより意識しやすくなります。
| 項目 | 推奨値 |
|---|---|
| コーヒー粉 | 16g(中粗挽き) |
| お湯 | 200g(85℃) |
| 蒸らし | 粉量の2倍 / 30秒 |
| 合計抽出時間 | 2分以内 |
| ドリッパー | 円錐形(三洋産業フラワードリッパー) |
コーヒー粉16gを中粗挽きにセット。お湯を85℃に調整します。フィルターをリンスしてドリッパーを温めておきます。

粉量の2倍の湯量(ここでは32g)を注ぎ、30秒蒸らします。コーヒー粉内部にお湯が浸透し、焙煎時に生成された二酸化炭素が放出されます。この工程が、その後の均一な抽出につながると考えています。

中心から「の」の字を描くように注湯。序盤の注湯量を多くするのが、私たちの抽出の特徴のひとつです。濃度勾配が大きいこの段階で多く注ぐことで、酸味と甘味が感じられやすい液体に仕上がると感じています。


粉全体から成分を引き出せるよう、ペーパーに付いている粉の山(土手)を崩し、平らにしていくイメージです。


後半は少量の注湯で抽出深度を微調整していくイメージです。

合計200gになるまで注湯。4投目と同様に、細く静かに注ぎます。

抽出が終わったら、ドリッパーを引き上げてカップに注いで完成です。

Roast Level Guide
基本レシピをベースに、焙煎度に応じて変数を調整することで、それぞれの豆の個性を引き出せます。
| 焙煎度 | 湯温 | 挽き目 | 抽出時間 | 味わいの傾向 |
|---|---|---|---|---|
| 浅煎り | 85〜90℃ | 中粗挽き | 1:30〜2:00 | 明るい酸味、フルーティ、華やか |
| 中煎り | 80〜90℃ | 中粗挽き | 1:30〜2:00 | 酸味と甘みのバランス、クリーン |
| 深煎り | 80〜85℃ | 中粗挽き | 1:30〜2:00 | ボディ、ビター |
FAQ
何度がベストかは、お好みにより変わり、また器具などの環境によっても異なりますので、ご自身のお好みの味わいが再現できる温度が、ご本人にとってのベストと言えるかと思います。
参考ではありますが、新田珈琲では85℃を基本としています。湯温はコーヒーの成分の溶出速度に直結する、最も影響力の大きい変数だと感じています。高すぎると苦味や渋みが強く出やすく、低すぎると酸味が際立つ傾向があります。85℃は酸味・甘み・ボディのバランスが取りやすい温度帯ですが、豆の焙煎度によって調整します。浅煎りなら85〜90℃、深煎りなら80〜85℃を目安にお試しください。
湯温の行程により、抽出深度の進む速さが早くなったり遅くなったりするイメージです。
蒸らしは、コーヒー粉の内部にお湯を浸透させ、焙煎時に生成された二酸化炭素を放出させるとともに、成分が溶け出すために十分な吸水を促すための工程です。新田珈琲では30秒の蒸らしを基本としています。蒸らしが不十分でガスが豊富に残った状態で注湯すると、炭酸ガスが吸水を妨げ、お湯と粉の接触が不均一になり、十分な抽出ができないまま工程が進んでしまいます。しっかり吸水させることで、その後の注湯で均一な抽出が実現できます。
新田珈琲の抽出理論では、粒度はお湯との接触面積と、粉の中心から表面までの距離に関わる変数として捉えています。粒が細かいほど表面積が増え、さらに中心から表面への距離が短くなるため、心地よい成分も、そうでない成分も含め、溶け出しやすくなる傾向があります。ただし、心地よい成分もそうでない成分も出やすくなる点は意識しておくといいかもしれません。参考に新田珈琲のハンドドリップの基本は中粗挽き(グラニュー糖とザラメの中間程度)が多いですが、お好みに合わせて調整してみてください。
「抽出深度」は、コーヒーからどの程度まで成分を引き出しているかを表す概念です。多くのコーヒー愛好家や専門家が日々の抽出の中で感覚的に捉えている概念かとは思いますが、新田珈琲ではあえて言葉を与えることで、より明確にイメージできるようにしました。一般的な感じ方としては、コーヒーの成分は酸味→甘み→苦味→雑味の順で溶出していく印象かと思いますが、抽出深度が浅いほど酸味が中心となり、深くなるにつれて甘味、苦味、最終的に雑味まで含まれやすくなります。理想的な抽出とは、この抽出深度を適切にコントロールし、「好ましい成分」は十分に、「好ましくない成分」はできるだけ抑えることです。
新田珈琲のコーヒーの抽出理論における「濃度勾配」とは、各注湯段階でのお湯と粉の比率――全体のレシオとは別の「瞬間的な比率」のことです。この瞬間的な比率が拡散速度を直接左右するため、注湯の量とタイミングを設計することで味わいをコントロールできます。
たとえば、蒸らし時(1:2)と2湯目(1:6)と、最後の抽出時(1:12.5)では、お湯に対する粉の比率がそれぞれ異なります。2湯目は、湯量が多く溶け出す力が強いので、酸味と甘味が中心になります。後半をさげることで、溶出は穏やかに。この変化を各注湯で意図的にデザインするのが、新田珈琲のメソッドの核心です。
粉量と湯量の関係は、いくつかの段階でコーヒーの味に影響します。
1つ目は、全体の比率です。コーヒーの抽出は、粉に含まれる成分をお湯で溶かし出す作業です。溶かし出せる成分の総量は粉の量で決まります。
2つ目は、各注湯ごとの比率です。お湯を複数回に分けて注ぐ場合、その都度のドリッパー内の粉と湯量の比率(濃度勾配)によって、成分の溶け出す力が変わります。
この比率を意図的にコントロールするために、新田珈琲では粉量を基準に湯量を設計しています。
ここに記載しているのは、あくまでお店の標準的なレシピです。
そのレシピでは、コーヒー1杯分は粉16g、お湯200gが基本です。比率にすると1:12.5になります。新田珈琲の標準レシピでは、この16gの粉に85℃のお湯を5回に分けて注ぎ、約2分で抽出します。この比率を基準に、濃いめが好みなら粉を増やすか湯量を減らし、あっさりが好みなら逆に調整してください。
粉量と湯量の考え方を詳しく知りたい方は、ブリューレシオの考え方や湯量と粉量の関係もご参考ください。
ハンドドリップで苦味が強すぎる場合は、湯温を2〜3℃下げるか、挽き目を粗くしてください。湯温が高いほど、また粒度が細かいほど、苦味成分まで溶け出しやすくなります。新田珈琲の抽出理論では、これは「抽出深度が深すぎる」状態と捉えます。深煎りなら80〜83℃程度まで下げてみるのもひとつの方法です。
ハンドドリップで酸味が強すぎる場合は、湯温を2〜3℃上げるか、挽き目を少し細かくしてください。酸味が際立つのは「抽出深度が浅い」状態で、甘味やボディの成分が十分に引き出せていない可能性があります。湯温を上げることで拡散速度が上がり、より多くの成分を引き出せます。
初心者には新田珈琲の基本レシピがおすすめです。コーヒー粉16g(中粗挽き)、お湯200g(85℃)、蒸らし32gで30秒、その後4回に分けて注湯し、合計約2分で抽出します。ドリッパーは円錐形(三洋産業フラワードリッパーなど)を推奨しています。まずはこの基本レシピを試し、好みに合わせて湯温や挽き目を調整していくのがよいでしょう。
注湯テクニックに自信がない方には、クレバードリッパーもおすすめです。浸漬式なので、粉量・湯量・時間の管理だけで安定した味を再現できます。
新田珈琲では、加水(バイパス)を抽出手法として推奨しているわけではありません。抽出の基本は、注ぎだけで適切な濃度に仕上げることです。濃く作りすぎてしまった場合に、無理に飲まずお湯で割ると飲みやすくなりますよ、というアドバイスとして紹介しているものです。なお、JHDC(ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ)の競技ルールでは、抽出後のサーバーへの加水は禁止されています。
新田和雄のJHDC 2023年・2024年の優勝レシピでは、2種類以上の挽き目をブレンドする手法は使用していません。新田珈琲の抽出スタイルは、濃度勾配と拡散速度による抽出深度の制御を核としたものです。JHDCのルール上、コーヒー豆の挽き方は任意ですが、新田和雄の優勝レシピは単一の挽き目で設計されています。
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抽出理論を実践に活かすためのヒントをまとめています。
本ページでご紹介した内容は、書籍『新田珈琲の抽出』(2025年5月刊・Kindle版)でより詳しく解説しています。濃度勾配を利用した具体的なレシピ設計や、豆ごとの調整例など、実践的な内容を掲載しています。
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